気づかないうちにハマっている“広告の流れ”だんだんと暑くなってきて、プロ野球も交流戦の時期を迎えました。私はというと、幼少期からのホークスファン。今でも夕方になると、自然とスマホで試合の情報をチェックをしてしまいます。そんなある日、電車を降りて歩いていると、最寄り駅近くの看板にふと目が止まりました。「プレイボール and ハイボール。」妙にしっくり来るこのキャッチコピー。それを見た瞬間、頭の中に浮かんできたのは——「今日は試合あるな。帰ったら一杯飲みながら、ゆっくり観ようか」そんな、ほんのりとした気分の高まりでした。サントリーのトリスハイボールの広告でした。調べてみると、サントリーは過去にも別ブランドで同様のキャンペーンをしていたようです。「缶と氷でプレイハイボール!」(サントリー)どうやら今、大手各社が競っているのは、「商品そのもの」ではなく、「その商品を使う“場面”」なのかもしれません。今回の戦場は“野球とお酒”心が自然と動いてしまうこの感覚。実は、「日常のシーンに寄り添う広告」が、今じわじわと増えてきているのです。なぜ「野球×お酒」が売れるのか?このキャンペーンのすごいところは、商品の機能や味を語っているわけではないのに、「欲しくなる」という点です。それはなぜか?“商品”ではなく“場面”を思い出させているからです。「野球を観ながら飲むハイボールって、なんか良いよね」──そう思わせるだけで、購買意欲は自然と高まる。商品を使う“シーン”を、一言のコピーで思い浮かばせる設計。ここに広告としての巧みさがあります。「缶と氷でプレイハイボール!」さらに注目したいのは、選ばれているシーンそのもの。試合の始まる夕方仕事が終わって、家でひと息つく時間氷いっぱいのグラスに、注ぎながら飲む一杯誰もが「いい時間だな」と思える瞬間に、そっと商品を結びつけているのです。もっと凄いのは、お酒が飲めない私でも「絶対美味しいだろうな」と思ってしまう点です。つまりこれは、偶然生まれたキャッチコピーではなく、「心が動くシーンから、商品を選ばせる」という設計の賜物。では、ここで問いかけてみたいのです。この発想、店舗でも活かせないでしょうか?「いつ、どんな気分で、どんな人に、どんなふうに楽しんでもらいたいか」そこから逆算すれば、POPの一言も、SNSの投稿も変わってくるはずです。広告が「場面との結びつけ」にシフトしている理由「場面との結びつけ」マーケティングの世界ではこれを「カテゴリーエントリーポイント(CEP)」と呼びます。聞きなれない言葉ですが、要するにこういうことです。私たちは、何かを買うとき、「場面」→「商品カテゴリー」→「具体的なブランド」という順番で選ぶことが多い、という考え方です。たとえば…野球を観る → お酒が飲みたい → ハイボール or ビール野球を観る → ハイボールを飲みたい → ジムビーム or トリスハイボールつまり、「野球」という場面が、商品の入り口になっているのです。この発想が今、多くの広告に取り入れられている背景には、次の3つの理由があります。理由①:習慣に浸透すると、選ばれる回数が増える「おいしい」「安い」だけでは、もう差がつきにくい時代。だからこそ、「いつ飲むか」「どんなときに選ばれるか」という“場面”が重要になっています。それが習慣の一部として定着すれば、毎週のように、毎晩のように選ばれるようになる。「野球=ハイボール」が、無意識の選択肢になるのです。他球場では別のメーカーも同様の広告を行っているようです。阪神甲子園球場で楽しむオリジナルハイボール(アサヒ)理由②:人は“気分”で選ぶようになった「今日は外で飲みたい」「ちょっと贅沢したい夜」「スポーツ観戦で盛り上がりたい」%3Ciframe%20width%3D%22560%22%20height%3D%22315%22%20src%3D%22https%3A%2F%2Fwww.youtube.com%2Fembed%2Fc0fR_BhoIQg%3Fsi%3DbVn6T1TQun0va1rR%22%20title%3D%22YouTube%20video%20player%22%20frameborder%3D%220%22%20allow%3D%22accelerometer%3B%20autoplay%3B%20clipboard-write%3B%20encrypted-media%3B%20gyroscope%3B%20picture-in-picture%3B%20web-share%22%20referrerpolicy%3D%22strict-origin-when-cross-origin%22%20allowfullscreen%3D%22%22%3E%3C%2Fiframe%3Eそんな気分がきっかけとなり、商品が選ばれる時代です。だからこそ、気分に寄り添うメッセージが、購買の背中を押してくれる。広告の役割は、その気分にそっと寄り添うことへと変わってきています。理由③:「共通体験」が記憶に残る「金曜の夜に、野球とハイボール。」「金曜の夜は、映画とハイボール。」そんなシーンを、あなたもどこかで体験していませんか?%3Ciframe%20width%3D%22560%22%20height%3D%22315%22%20src%3D%22https%3A%2F%2Fwww.youtube.com%2Fembed%2FOegxQ_N6FAU%3Fsi%3DxaRv8EZlsmr3F9JI%22%20title%3D%22YouTube%20video%20player%22%20frameborder%3D%220%22%20allow%3D%22accelerometer%3B%20autoplay%3B%20clipboard-write%3B%20encrypted-media%3B%20gyroscope%3B%20picture-in-picture%3B%20web-share%22%20referrerpolicy%3D%22strict-origin-when-cross-origin%22%20allowfullscreen%3D%22%22%3E%3C%2Fiframe%3Eこのような“みんなが知っている時間”に商品が結びつくと、ブランドの印象は何倍にも強く残ります。「みんながやってる」「あれ、いいよね」という空気をつくることこそ、今の広告の本質なのかもしれません。このように、「プレイボール and ハイボール」は、ただのダジャレでも、偶然のコピーでもない。“人の気分”と“場面”に寄り添う設計が、商品を動かしているのです。では、この発想、店舗でも応用できるとしたら——?次の章で、そのヒントを探っていきます。店舗だったらどうやって利用できる?3つのヒント「それって、大手だからできることでしょ?」そんな声が聞こえてきそうですが、実は、店舗でも“結びつけ広告”の発想は活かせます。しかもそれは、高額な広告費をかけずに、POPのひと言や、SNSの投稿、ちょっとした仕掛けだけでも実現できるのです。たとえば、もしあなたのお店が地元球団のある街にあって、カウンターだけの小さな居酒屋だったとしても——「野球×お酒」という、共通の楽しみを持つお客様に向けて、こんなアプローチができます。ヒント①:「季節」や「イベント」と結びつけるプロ野球の開幕、交流戦、オールスター、クライマックス…年間を通じて、野球には“旬”があります。そんな時期に、「今夜は◯◯戦!観戦前にこの一杯」「◯◯ハイボールで、プレイボール。」このようなPOPやSNS投稿があるだけで、“気分に寄り添うお店”として印象づけられます。お客様にとって、「あ、あそこ行こうかな」と思い出されるきっかけになるのです。ヒント②:同じブランドを扱っているなら、便乗できるたとえば、サントリーのトリスハイボールやジムビームを扱っているなら——「CMと同じ一杯、ここでも飲めます。」これだけで、テレビや街頭広告を“利用した体験”を提供できるようになります。ブランドが築いたイメージに、うまく“のっかる”こと。それは、お店にとっても立派なマーケティング戦略です。ヒント③:「体験イベント」として実施する「金曜の夜は“野球ナイト”」試合中継を流しながら、野球ファンが集まって一緒に盛り上がれる空間をつくる。そこに、「観戦限定メニュー」や「勝利記念サービス」を添えることで、お客様にとっては“思い出ごと”共有できる体験になります。常連さんだけでなく、新しいお客様との接点にもなり得るイベントです。一緒に考える、「続けられる工夫」airが目指しているのは、一時的な話題づくりや派手なプロモーションではありません。大切にしているのは、お店のらしさを活かしながら、日常にそっと寄り添う工夫を見つけていくこと。たとえば、「この一杯が、誰かにとっての特別な時間になる」そんな瞬間を、つくれるお店って、きっと素敵です。無理なく、背伸びせず、でもちょっと楽しく。そんな“続けられる仕掛け”を、一緒に考えていけたら——私たちは、それ以上にうれしいことはありません。