「繁盛店って、どうやって作るんですか?」新しいお店を始めようとしているとき、誰しも一度は立ち止まる瞬間があります。── どうやったら、お客さんって来てくれるんだろう?── 成功しているあのお店と、うちの違いって何だろう?── 自分のやりたいことって、受け入れられるのかな?まわりから聞こえてくる声は、どれも正論に聞こえます。「もっと人を集めなきゃダメだよ」「トレンドに乗ったほうがいい」「専門性が高くないと、難しいよ」「隣に競合店ができても、勝てる魅力が必要だよ」どれが正しいの...気がつけば“迷いの道”に入ってしまうことがあります。でも、心のどこかがザワついている。それって本当に、自分のお店に合ってるんだろうか──?そう感じたあなたに、ひとつお伝えしたい視点があります。それは、「たくさんの人に知ってもらう」よりも大切な、 “何度、思い出してもらえるか”という考え方です。あなたのお店が目指すべき「繁盛」は、“人の数”ではなく、“選ばれる回数”の中にあるのかもしれません。あなたなら、どちらを選びますか?想像してみてください。あなたは、ある「1000人の村」にやってきました。そこには、飲食店がたった1店舗分だけ空いています。村の代表者は、あなたにこう尋ねてきます。「この枠に入れるのはどちらか一つだけです。弁当屋さんにしますか?それとも、午前中だけ開いているパン屋さんにしますか?」── あなたなら、どちらを選びますか?「弁当の方が幅広く売れそうじゃない?」「パン屋って朝しかやってないし、ニッチすぎない?」たしかにそう思うかもしれません。でも、少しだけ考え方を変えてみましょう。この村には、1000人の人が住んでいます。そして、1人あたり1日3回の食事をするとしたら、1000人 × 3回 = 3,000回の食事機会/日→ 1ヶ月では、90,000回もの“食の選択”が生まれます。そう考えると──あなたが競うのは、「何人が来てくれるか」ではなく、「この9万回のうち、何回選ばれるか」なのではないでしょうか。実例で考える:「万人ウケ」と「ニッチ」の勝負あなたは、ある山間の小さな村にやってきました。人口はちょうど1,000人。スーパーもコンビニもありません。あなたは出店の判断材料を集めるため、村で聞き込み調査を始めました。選択肢①:お持ち帰りのお弁当屋さん(万人ウケ)選択肢②:午前中だけ営業のパン屋さん(ニッチ)1000人の村での、聞き込み調査の結果村の人たちの食習慣(1日3食×1000人=3,000回/日)1ヶ月あたりの食事回数は90,000回お弁当について聞いてみると…「お弁当って、時々無性に食べたくなるよね」(40代・男性)「週に1回くらいなら買ってるかな…忙しい時とかね」(30代・男性)「毎日は飽きちゃう」(60代・女性)→ 実際の全国統計でも、お弁当を週1回以上買う人は約3%程度→ 月に1回以下の人が大多数。習慣化は弱い印象。一方、パンについて聞いてみると…「朝はパン派なんですよ。焼きたてがあるなら毎日でも」(50代・女性)「パン屋は遠いけど食べたくなる」(20代・男性)「うちは週末の朝、家族でパン買いに行くのが定番なんです」(40代・女性)→ 実際の全国統計でも、パンは週1回以上買う人が80%以上→ そのうち午前中に買う人が3割以上→ つまり、“ニッチ”に見えても朝のパン屋には安定したリズムがある気がするあなたは、メモ帳に以下のように書き込みました。「お弁当屋さんは“たまに食べたいもの”パン屋さんは“日常に溶け込んだもの”」視点弁当屋さん(万人ウケ)パン屋さん(ニッチ)来店対象幅広い層朝に動く人(ビジネス層・主婦など)リピート性弱め強い営業時間長め(昼〜夜)短め(午前中のみ)習慣化しやすさ低そう高そう価格帯中(500円想定)小(300円)客単価高めだが頻度が低い低めだが頻度が高い可能性ニッチと思ってたが、“回数”では3倍近いポテンシャルあなたは聞き込み調査のあと、「数字で見てみよう」と思い立ち、電卓を片手に計算を始めました。毎月どのくらいの売り上げになるかを計算していきます。計算①:お弁当屋さんをやるとしたら村の1000人のうち → 月に1回以上お弁当を買う人:14%(140人)平均して月に1.5回買ってくれると仮定すると: → 140人 × 1.5回 = 210食/月単価500円 × 210食 = 105,000円/月参考データ:市場調査データ持ち帰り弁当店計算②:午前中のパン屋をやるとしたら村の1000人のうち → 週1回以上パンを買う人:82.8%(828人) → そのうち午前中に買う人:約31.1%(257人)1人あたり週1.5回 × 4週 = 月6回買うとすると: → 257人 × 6回 = 1,542食/月単価300円 × 1,542食 = 462,600円/月参考データ:1000人に聞いた「パン購入のゴールデンタイム」それぞれ比較:“回数”では3倍近いポテンシャル差がある店舗タイプ想定月間販売数単価月商お弁当屋さん210食500円105,000円午前パン屋さん1,542食300円462,600円なんと、売上は“約4.4倍”「ニッチに見えるパン屋」の方が、回数で圧倒的に選ばれていたのです。ポイントは「何人に売れるか」ではなく「何回、買ってもらえるか」たとえ単価が低くても、“習慣”に入り込めるお店は、何度も思い出してもらえる。「朝のパン」は、それだけで生活のリズムの一部。だからこそ、“ニッチな選択”のように見えて、結果的には強いのです。午前のパン屋vs午後のパン屋あなたはふと思いました。「あれ、パン屋の方が儲かるぞ...午前ではなく、午後ならどうだろうか」全体のパン購入者から午後ユーザー数を算出してみます。午後は12:00~18:00の営業としてみます。統計データを使ってみます。村の人口:1000人パンを週1回以上買う人:828人(=82.8%)午後帯利用者:→ 828人 × 48.7% ≒ 約403人午後のパン屋のポテンシャルは?週1.5回 × 4週 = 月6回の購入→ 403人 × 6回 = 2,418食/月パン屋の営業時間帯想定販売食数/月単価月商午前中営業(7〜12時)約1,542食300円約462,600円午後営業(12〜18時)約2,418食300円約725,400円村の代表の方にお願いして、午前中に仕込みをする方が美味しく作れるので午後専門店にさせて欲しい。と伝えるべきかもしれないことが分かります。理想と現実のあいだで、何を見ておくべきか?ここまで、1000人の村というシンプルな前提で、「どっちのお店が回数で選ばれるか?」という話をしてきました。「うぉ!!パン屋を出せば儲かるじゃんか!」けれど、現実の世界はそんなに単純ではありません。実際には──村には直売所があり、朝早くから焼き立てパンが並ぶ日もあります。趣味で焼いている〇〇さんのパンが、実は評判だったりもします。イベントのときは地域の婦人会が手作りおにぎりを販売していたりもします。全国統計を軸にしているので、この村では別の習慣があるかもしれません。つまり、「パンを売れば当たる」という単純な話ではないのです。さらに、仮に需要があっても、お店に来られる時間が限られている人もいるし、混み合った時にさばける人数には限界があります。立地や導線、駐車場など、物理的な摩擦も無視できません。でも、それでも──「母数」は考えておいた方がいいすべてが思い通りになるとは限らない。でも、「この地域に、パンを欲しい人がどのくらいいるのか?」「朝に何かを買う習慣が、どれだけ根づいているのか?」そういった“選ばれる可能性の母数”を知っておくことは、商売の設計をする上で、大きなヒントになるのです。airとしての視点私たちが現場でよく耳にする言葉のひとつに、「新商品を売ってみたのですが、やっぱり、需要がなかったんですよね」というものがあります。たしかに、売上が思ったように伸びなかったとき、「需要がなかった」と結論づけたくなる気持ちは、よく分かります。でも実際に話を聞いていくと、その“需要がなかった”という言葉の中身が、あいまいなままになっていることが少なくありません。それは本当に「需要がなかった」のか?よくよく考えてみると──そもそも、その商圏には“習慣”が存在していなかったのか?(つまり、朝にパンを買う人自体がいない町だった)それとも、習慣はあったけれど、“他のお店に勝てなかった”のか?(つまり、既に人気のパン屋や直売所が習慣を押さえていた)この2つは、まったく意味が違います。でも、多くの現場ではその区別がつかないまま、「うまくいかなかった=需要がなかった」と処理されてしまうのです。ヒント①:「何人来るか」ではなく「何回選ばれるか」で考える→ 「どんな習慣に入り込めるか?」と考えると、見えてくるものが変わります。ヒント②:「ニッチ」に見えることが、実は“万人の習慣”だったりする→ 朝のパン、夕方のコロッケ、土曜の花屋。回数があるなら、それは武器になる。→好意度が高い場合は、回数が増えるため、ニッチにして好意度を高められると回数が増えるヒント③:お店が成功するかは「始める前」に決まっていることも多い→ 「どんな人が」「どんな時に」「何回くらい」来てくれそうか?この問いに、ざっくりでも答えられる状態から始めたお店は、強いのです。逆にここが曖昧だと、習慣づくりのために莫大な時間とコストがかかってしまいます。視点を変えてみる。「回数」で見るだからこそ、airが大事にしているのは、「この商圏に、そもそも“何回分の習慣”があるのか?」という視点です。たとえば、朝にパンを買う習慣が月に1,000回あったとして、そのうち何回分を、自分たちのお店で取れそうか?それが見えていれば、本当に勝負になるのか習慣をつくるコストがどのくらい必要なのかも、事前に見通しが立ちやすくなります。「人が来るか」ではなく、「どのくらいの“回数”があるか?」そして、「その中で、何回選ばれるか?」これが、私たちairが一緒に考えている“お店の土台”なのです。